2014.11.08
とても珍しい鋏の研磨を依頼されました。
弓道で使用する矢につける鳥の羽を切る鋏です。
長年仕事をしてきても
まだまだ見たことのない珍しい道具があるものだと
痛感しました。
長い刃渡りなら
通常の裁ち鋏でも切れると思いますが
職人さんはこれに慣れていて使い易いのでしょう。
ご依頼を戴く時に事前に電話で打診されていましたが
刃渡り20cm、全長30cmの大きな握鋏というので
作業スペースを確保できれば
なんとか研げるだろうとは思っていましたが
隣の裁縫などで通常一般に使用される3寸5分(105mm)と
比較すると実物はかなりの迫力です。
鋏の場合は裏がどのような状態であるかによって
作業の手間が全然違ってきますが
幸いにも新しい方は
綺麗に裏すき(U字型のくぼみ)ができていましたし
古い方もかなり反りがひどく裏すきが浅いものの
素人が手を加えた様子もなく
無事にすき直せました。
研磨作業というのは
使用して切れなくなった物は
どんなにひどくても手間は掛かりません。
自称研ぎ師という素人が崩してしまった物を
本来の姿に戻すのに手間が掛かるのです。
特に鋏の場合は
裏すきと2枚の刃の擦り合わせ調整が命なので
実物を見ずに研磨依頼を受けるときには
それまでどのように研がれていたかをお尋ねしています。
珍しい道具との出会いは楽しみですし
希少な職人さん達のお手伝いができるのは幸せです。
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