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2024.11.14

「黒打ち」とは

こんにちは。

今日は包丁の伝統的なスタイル「黒打ち」についてお話します。

写真の包丁は弊社で販売しているものです。

白二鋼 黒打ち仕上げ和牛刀210㎜ 桜柄 富樫刃物製作所

包丁の表面が黒く染められているのが分かります。

この仕上がりは包丁の業界で、「黒打ち」と呼ばれています。

古くからある伝統的な研ぎ方の一種です。

これらの包丁の装飾は鍛造品に使われることが多いです。

鍛造して焼き入れ(高温で熱して急冷する作業)した包丁は、表面が酸化するため、

写真のような黒色に変わります。

その黒く酸化した部分を敢えて残し、刃の部分だけ研ぎ上げる手法を「黒打ち」と呼ぶのです。

何故そのような手法があるかと言うと、いくつかのメリットがあるからなんです。

①研ぎ師の手間を省くことで、コストを下げ、商品の価格を抑えるため

②既に酸化した部分は錆に強くなり(というか既に錆びている)、それ以上錆びにくくなるため

昔は黒打ち仕上げというと、菜切り包丁や出刃包丁が主な商品でした。

それは、それらの包丁が人目に付かない裏方作に使われる為、包丁装飾を省いたところ不都合がないからです。

むしろ、道具を購入する側は、通常の価格より安く良い包丁を手に入れることができました。

そのようなニーズに応えるためにあったのが、黒打ち仕上げです。

しかし、それも昔の話です。

現在、海外のお客様の多くが、日本の伝統的な包丁を求めていらっしゃいます。

そんな外国の方々からすると、黒打ち仕上げのルックスは、独特な荒々しさ、手作り感があり、

日本の伝統的なデザインとして人気を得ているのです。

日本人では気づかなかった、「価値の再評価」が外国の方々によってなされたのです。

実際のところ、現在包丁に用いられる黒打ちは、昔の仕上がりより綺麗に加工されています。

黒色を均一に出すため、薬品を使って揃えて腐食させ、よりスマートな仕上がりを目指して作られているのです。

むしろ、通常の仕上がりのように全体を磨き上げるより、手間はかかっているかもしれません。

作り手の手間を省くために用いられた黒打ち仕上げは、伝統的な包丁を表現するための手法として、

高度な技術の装飾技法に生まれ変わりました。

今後も日本の包丁は、多くの需要に合わせて変わっていくことでしょう。

ではまた。

合羽橋 包丁専門店 かまた刃研社 四代目 鎌田陽介