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2024.11.09

和包丁の王様「本焼き」

こんにちは。

今日は和包丁の「本焼き」についてお話します。

「本焼き」とは、包丁の製法において、一枚の鋼だけで作られる包丁のことを言います。

しかし、単純に一枚の包丁を全て本焼き(ほんやき)と呼ぶわけではありません。

一般的に販売されている包丁とは、その製法が異なるのです。

写真の包丁が大阪堺市で作られた刺身包丁の「本焼き」です。

白紙一号 先丸柳330㎜ 水本焼き 上黒檀柄

かっこいいですね。

大阪の堺市では、「本鍛造」と呼ばれる鋼を打ち叩いて作る製法が主です。

こちらの包丁も一枚の良質な材料を鍛造して打ち伸ばすことで作られています。

それだけでも大変な作業ですが、本焼きの難しいところは、「焼き入れ」になります。

「焼き入れ」(やきいれ)とは高温度で赤めるまで熱した包丁を急冷することで、鋼の科学変化を起こし、硬さを引き出す最終工程のことです。

しかし、材料すべてに焼きを入れてしまうと、衝撃に弱い、欠けやすい包丁になってしまいます。

そこで、包丁の峰(背)から中腹までに泥を塗り(土置き)、わざと焼きが入らない措置を取ります。

そうすることで、一枚の鋼の中で柔らかいところと硬いところの二層に分かれます。

柔らかい部分が刃の全体に渡る衝撃を緩衝してくれるため、割れなどのリスクを下げるのです。

写真の包丁でも、真ん中に「波紋」が見えますが、ここがその境目となっているのです。

言葉で表現すると簡単なことのように感じますが、実際にはかなりの高難度な技法です。

大阪の堺市にいる鍛冶屋さんの中でも、この製法を用いることができるのは数名しかおりません。

私が以前お話した、堺市の伝統工芸士の「富樫憲治」さんも、この本焼きができるようになるまで、

思考錯誤で7年かかったとおしゃられています。

この本焼きを作れるのは限られた鍛冶屋でしかないため、本焼きを作れることはその方の技量が高い

ことを証明しています。

また、価格も通常の包丁と桁が一つ変わるため(令和6年現在の相場でも20~30万円)、

プロの板前の中でも買われる方は僅かです。

しかし、和食の道を心掛ける板前さんにとっては、いつか手にしてみたいと思わせる最高品質の包丁です。

日々沢山の包丁を見ている私ですら、納品された包丁に惚れ惚れすることもあります。

世界一繊細な料理である「和食」に用いられるのに相応しい、職人技術の集大成の包丁が「本焼き」なのです。

合羽橋道具街に店を構える弊社でも、最上のケースに入れてご覧頂けるようにしています。

合羽橋の中でも、これだけ本焼きを充実させているお店はないと自負しておりますので、

お越しの際は是非ご覧になって下さい。

それではまた。

合羽橋道具街 包丁専門店 かまた刃研社 四代目 鎌田陽介