2024.09.03
こんにちは。かまた刃研社 四代目 鎌田陽介です。
皆さま、「牛刀」をご存知ですか?
いわゆる、万能包丁の一種で、家庭で馴染みの「三徳」より少し幅が狭くスマートな形をしています。
三徳包丁は家庭用の包丁であり、牛刀はプロの仕事にも使われるため、サイズは小さいものから大きいものまで多岐にわたります。
写真の包丁は弊社が販売してる包丁です。研ぎ直しでお預かりしました。
「VG10 和牛刀240㎜ 水牛八角柄」
「VG10」とは鋼材の名前で、武生特殊鋼材が手掛ける高級ステンレス材です。
高硬度でありながら靭性の高い材料であり、切れ味が良いだけでなく耐摩耗性に優れています。
家庭用からお仕事まで、優れた品質の包丁に使われる代表的な鋼材です。
注目していただきたいのが柄の形状で、よくあるお刺身包丁や出刃包丁に使われる「和の柄」が使われています。
このモデルを「和牛刀」と呼びます。
一般的な木を鋲打ちでとめてある「牛刀」と何が違うのでしょうか。
それは、「刃の厚み」です。
和牛刀は主に和食を扱う板前さんが、野菜を薄く丁寧に切ることが多く、繊細な切れ味が必要です。
それを実現するために、包丁の峰(背の部分)から刃先にかけて、全体的な厚みを「薄く」して作られています。
もし、包丁が「厚く」できていると、大根などの幅があるお野菜を切った際に「実割れ」を起こしやすくなりますので、和牛刀は薄口が好ましいのです。
というのが、これまでの和牛刀についての説明でしたが、
最近では、その違いもなくなって来ました。
それは、海外の人々が日本の包丁を求めるようになったからです。
この和包丁に使われる柄のスタイルは、海外の方からすると「日本の伝統」を感じられるスタイルのため非常に人気があります。
従来の薄口の牛刀では、刃を欠けさせてしまうというような、トラブルが多くなります。
そこで、日本のメーカーは一般的な洋包丁と同様の厚みを持つ刃に和包丁の柄を取り付けることが多くなりました。
今では「牛刀」と「和牛刀」で刃の違いはほとんどなくなりました。
弊社でも、店頭で違いを説明する際は、「スタイルの違いだけ」とシンプルにご案内しています。
包丁が「道具」であるため、道具を使う人や、需要によって少しずつ相場が変わって来ています。
それが「道具」である包丁の本来あるべき姿かもしれませんね。
それではまた。
合羽橋 かまた刃研社 四代目 鎌田陽介
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